本当にここで安全に暮らせるのか? 避難解除の町の今 5

【週刊プレイボーイ】
2017年3月27日号
ご近所からもらった干し柿から400ベクレル!!
本当にここで安全に暮らせるのか? 避難解除の町の今

《前回の続き》
実際、ベラルーシのユーリ・バンダジェフスキー医師は、チェルノブイリ原発事故で被曝し、その後、突然死した子供の解剖を行い、内臓にセシウムがたまっていたことを明らかにしている。
とはいえ、いくら山や家庭菜園で採れたものにセシウムが含まれていても、小売店で流通しない限り住民の口に入る機会は少ないと考えるだろう。南相馬市では、まだ、出荷制限や摂取制限が適用されている食品も多い。だが、「田舎では、『お裾分け文化』があるため、たとえ出荷制限となっている食品でも食べないとは言い切れない」と南相馬市の住民が言う。
「採れたての山菜やキノコなどは、近所同士ので分け合うのがこちらの習慣。天ぷらなどにすればおいしいし、イノハナご飯はごちそうですから。
私たちのような内部被曝は危険だと思っている人たちは、もらっても食べずにこっそり捨ててしまいますが、気にしない人は食べてしまっている。特に年配者にそういう人が多いです。現に私の知り合いにも『旬のもんだから、一度くらい食ったっていいべ』という人がいます」
そうなると特に大家族の場合、衝突も起こりかねない。
「小さな子供のいる夫婦、特に小さな子供のいる夫婦、特に母親は、子供に汚染された食べ物を食べさせたくない。ところがジジ、ババは昔からずっと土地のものを食べているし、『国が安全と言っているから大丈夫だ』と言う。姑夫婦と別メニューにできる家庭はいいですが…。放射能に対する考え方の違いが、家庭不和の原因になっている話はよく聞きます」
別の住民はこう言う。
「知り合いからもらった干し柿を測定したら400bq/kgを超えていたため、すぐに捨ててしまいました。私にくれた人はそれを平気で食べていると言いますが、私が食べるとしたらせいぜい30bq/kgぐらいまで。それでも好んで食べるわけない。私のうちにも柿の木がありますが、切ってしまいました」
こんな話もささやかれている。
マツタケなどのキノコやさんさいを採りに行く人たちの中には、原発事故前まではそれを売ることで年間400万円ぐらい稼いでいた人もいる。自分の縄張りを『城』と呼び、他人はおろか息子にも教えないほどです。
【転載続く】