ICRPの”フィクション”に踊らされた、「低線量被ばく」の危機意識が

西尾正道(にしお まさみち)
函館市生まれ。1974年札幌医科大学卒業。卒後、独立行政法人国立病院機構 北海道がんセンター(旧国立札幌病院)で39年間がんの放射線治療に従事。2013年4月より北海道がんセンター名誉院長、北海道医薬専門学校学校長,北海道厚生局臨床研修審査専門員。
【ヘルスプレス】
ICRPの"フィクション"に踊らされた、「低線量被ばく」の危機意識がない医療関係者たち
ヘルスプレス 2015年06月01日 23時00分

バイオアッセイでの測定もなく帰還は安全? michaklootwijk/PIXTA(ピクスタ)

 ここでは放射線の影「裏」の世界についてお話します。原発事故が起き、放射性物質が拡散しても、医療関係者からの発言が少ないのはなぜでしょうか?
 それは、医師や診療放射線技師、看護師などが使っている放射線防護学に関する教科書が、すべて「ICRP(国際放射線防護委員会)」の基準で書かれているからです。文部科学省が学校に配った副読本なども、その基準で書かれています。
 ICRPは、国際的な権威のある公的機関ではありません。研究機関や調査機関でもない、民間のNPO組織です。その目的は原子力政策の推進にあります。このため、「IAEA国際原子力機関)」や「UNSCEAR(国連放射線影響科学委員会)」などと手を組み、原子力政策を推進する上で、支障のない程度の報告書を出しています。
 報告書は、各国の御用学者が会議に招聘され、都合のよい論文だけを採用して作られています。ICRP自体が、調査・研究することはありません。ICRPには事務局が存在しても研究者はいないため、多くの医学論文で低線量被ばくの健康被害が報告されても、反論できずに無視する姿勢をとっています。国際的に放射線防護体系として流布しているICRPの理論は科学性に乏しいのです。
 つまり、ICRP放射線防護学は、原子力政策を進めるために作られた"フィクション"のようなもの。そのため、ICRPの内容が頭に刷り込まれた医療関係者は、政府のデタラメな健康管理対策にほとんど危機意識を持たず、傍観者になっているのが現状です。日本では、ICRPに関与する学者やICRPの報告に詳しい有識者が政府・行政の委員会のメンバーであるため、"国民不在の対策"という構図に陥っています。
モニタリングポストは4割程度低く設定している?
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