【福島原発かながわ訴訟】ビキニ水爆の被害者に寄り添う静岡の聞間医

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 WG報告書が発表された翌年の「原爆被爆者の死亡率に関する研究、第14報、1950−2003、がんおよび非がん疾患の概要」(LSS14報)では、「リスクが有意となる線量域は0.20Gy以上であった」、「30歳で1Gy被曝して 70歳になった時の総固形がん死亡リスクは、被曝していない場合に比べて42%増加し、また、被爆時年齢が10歳若くなると29%増加した」などと結論づけているが、これらはWG報告書には反映されていない(注:一般的に1グレイは1シーベルトとされている)。
 これについて、聞間医師は「放射線被曝の影響は一定の年数が経てば消えて無くなるものではないし、生涯にわたって続く。しかも、年齢が若い時点で被曝するほど、健康リスクが上がる事が分かった。0.2グレイという数値に関しても、『統計学的に有意差が確認出来なかった』のであって『健康影響が無かった』とは述べていない。低線量であっても健康影響がある事を示唆したものだ」と評価した。
「低線量被曝による健康リスクの有無は、長期間にわたって追跡しないと分からない」と聞間医師は言う。尋問に先立って提出された意見書でも、生活習慣と被曝リスクとを比較する国の手法を「驚くほかはない」「何の利益ももたらさない」と厳しく批判する
【証人採用反対し続けた国】
 この日は反対尋問は行われず、主尋問のみで正午過ぎに閉廷した。被告側代理人弁護士による反対尋問は次回9月7日の口頭弁論期日で行われる。次々回11月の期日では、原告に対する本人尋問が行われる予定だ。
 閉廷後に開かれた集会で、聞間医師は「解剖しても、発症したガンが被曝が原因か否かは分からない。疫学調査を積み上げて行くしか無い」とていねいな健康調査の必要性を語った。多くの原爆症認定訴訟で証人として法廷に立ってきた経験もあり、「反対尋問では何を言われるかだいたい想像がつく」とも。
 聞間医師は静岡県熱海市出身。信州大学医学部卒業。全日本民医連(全日本民主医療機関連合会)の代表として、旧ソ連セミパラチンスク核実験場や、南太平洋マーシャル諸島などでの核実験被害調査に参加。第五福竜丸元乗組員のC型肝炎の療養補償の実現のためにも奔走してきた。代表を務める「ビキニ水爆被災事件静岡県調査研究会」は2012年に焼津平和賞を受賞している。【転載続く】