チェルノブイリ原発事故による先天異常と遺伝的影響の兆し−チェルノ

※発掘記事
http://www.cnic.jp/421

【『原子力資料情報室】

チェルノブイリ原発事故による先天異常と遺伝的影響の兆し−チェルノブイリ・フォーラムの姿勢を問う(『通信』より)
2006/09/29
原子力資料情報室通信』387号(2006.9.1)掲載
広島大学原爆放射能医学研究所長 佐藤幸男
チェルノブイリ・フォーラムは先天異常増加を否定
 2005年9月、国際原子力機関IAEA)、世界保健機関(WHO)など国連機関やロシア、ベラルーシウクライナ共和国などがチェルノブイリ原発事故20年目に向けて被災の状況をまとめたチェルノブイリ・フォーラムの中でミンスク遺伝性疾患研究所のゲンナジー・ラジュク所長の資料としてベラルーシの非汚染地区での胎児・新生児の先天異常が、汚染地区での先天異常を上回っている図が掲載され(図1)、
「現地での先天異常の増加は認められない」との記事を見て、私は目を剥いた。「こんなことはありえない」、私は声にならない言葉を吐いて絶句した。
 ラジュク教授と私は、1990年以来、先天異常や遺伝に係わる同学の士として文部省科学研究費、トヨタ財団カタログハウス刊『通販生活』の読者のカンパによる「チェルノブイリの母子支援募金」などの支援を得て数十回の交流支援を重ねてきた。そして、2006年4月、ミンスクで開催される国際会議での共同発表の準備を進めていた。これまでわれわれが確認しあってきたのは、事故直後からの汚染地区での先天異常の増加であり、チェルノブイリ・フォーラムが示すような図は見たこともない。
 その後、年が明けて2006年2月、NHK取材班とともにミンスクでラジュク教授に会い、前述の経過について説明を受けた。
■先天異常児が汚染地区で増加
 ラジュク教授らは事故以来、汚染地区での先天異常の増加の有無を確かめる目的で高濃度汚染地のゴメリ、モギリョフなどの地区を厳密に設定し、対照地区には非汚染地区を選んだ(図2右)。
 被曝者としては、短期汚染地区居住者、移住者は除き、汚染地区に居住する親から生まれた新生児、および自然・人工妊娠中絶胎児などが顕微解剖や染色体検査の対象となった。
【転載続く】