本当にここで安全に暮らせるのか? 避難解除の町の今 2

【週刊プレイボーイ】
2017年3月27日号
ご近所からもらった干し柿から400ベクレル!!
本当にここで安全に暮らせるのか? 避難解除の町の今

《前回からの続き》
例えば、妊婦の被曝上限は1mSv、それ以外の女性は3ヶ月につき5mSvだ。成人男性でも年に換算すれば20mSv相当が上限となる。
しかもこれは職業上やむをえず被曝する人たちの基準。管理区域で働く人たちは、放射線防護の教育を受け、被曝をなるべく防ぐ装備をつけた上で被曝量の管理も行われている。
一方で今回、避難解除されるエリアの住民には、放射線教育も被曝よけの備えも与えられず、国からはただ「健康被害が出るような被曝量ではない」と言われるだけだ。
では、実際の放射線量はどのくらいなのか?環境団体のグリーンピース・ジャパンは昨年11月、村民が飯舘村に戻った場合、どれくらい被曝するのかを7世帯の協力を得て調査した。調査を担当したヤン・ヴァンダ・プッタ氏が説明する。
「1世帯につき3000ヶ所前後と非常に細かく放射線量を調べたところ、最高で毎時15.3マイクロシーベルト(以下μSv)の場所もありました。そのうちの1軒を例にとると、空間線量の平均は毎時0.7μSv。例えば、子供が1日12時間野外にいた場合、今後70年間で107mSvの被曝をする計算になります。これは胸部のエックス線撮影を約1000回行った被曝量に相当し、とても住民が安全に暮らせるレベルではありません」
ちなみに、国際的に認められている一般公衆の被曝量も年間1mSvで、前述のように、福島県以外は実際にその数値が採用されている。
「国際放射線防護委員会(ICRP)は、がんになるリスクは生涯被曝量に応じて増え続け、白血病を発病する被曝量には下限値がないとしています。4年前、国連人権理事会は日本政府に、年間1mSv以下になってから帰還を進めるべきと訴えました。しかし日本政府はそれを拒んだのです」
ちなみに、年間1mSvを毎時に換算すると、0.23μSvになる。
本誌でも飯舘村の民家を測定したところ、駐車場で毎時9μSv超えが見つかり、別の民家では室内で毎時0.34μSvを記録した。つまり、家の中で1日暮らしていても、年間1mSvを超える被曝をしてしまうことになるのだ。
毎時0.34μSvを示した民家の住人、伊藤延由氏(73歳)が怒りを込めた声で言う。【続く】