本当にここで安全に暮らせるのか? 避難解除の町の今 3

【週刊プレイボーイ】
2017年3月27日号
ご近所からもらった干し柿から400ベクレル!!
本当にここで安全に暮らせるのか? 避難解除の町の今

《前回からの続き》
「村や国は、放射線量は除染や自然減衰で90%下がったと言いますが、それでも原発事故前の10倍高い。来年4月には復興のシンボルとして学校を再開するというが、とんでもない。ここは人が住んではいけない場所なのです。村の住民懇談会では環境省の人が『年間20mSvの被曝はたばこの害よりも低い』と言っていましたが、好きで吸っているたばこと押しつけられた被曝は違う」
次に浪江町で測定すると、民家の外壁近くでけたたましく線量計のアラームが鳴り響いた。地表近くの数値を見ると14.7μSvと出ている。
また、同じ町内にある元原発作業員の今野寿美雄氏の自宅を測定させてもらうと、家の前の空き地の地表で5.16μSvを示し、ベランダの空間線量は0.92μSvだった。小学校5年生の息子を持つ今野氏は現在、福島市に避難中だ。長年、原発で働いてきた経験から、今の放射能汚染状況では家に戻れないことを実感している。「この状況は、原発なら全面マスク、汚染防止のカッパ、個人線量を測定するアラームメーターを装着するぐらいの汚染度です。そこへ帰れという町の判断はありえない」(今野氏)
富岡町でも状況はそう変わらない。市街地にあるアパートの玄関先を測定すると毎時5.96μSvあった。富岡町に限らず、この春に住民を戻す町村では一部を除いて除染を終えている。それでも放射線量が高いのは、再汚染されてしまうからだ。
「ふくいち周辺環境モニタリングプロジェクト」の共同代表、小沢洋一氏は、除染をしてもきりがないと話す。
「山が除染されていないため、いくら町を除染しても、風や雨と一緒に放射性物質が流れ込んでくるのです。特に冬は強い西風が吹き、砂ぼこりで目も開けられないくらいの日がある。風上の山から飛んできた放射性物質で町はあっという間に汚染されます。それが屋根にたまれば、室内や雨どいの下なども当然、高線量になってしまう。
それに、空から降ってくる物質を調べる『定時降下物』のモニタリング数値を見ると、今でも福島第一原発から飛んできている放射性物質があると考えています」
こうしたことを住民がただしても、環境省は「局所的に高い場所があったら追加除染をする」という回答ばかり。《続く》