【ふるさとを返せ 津島原発訴訟】「福島に帰れ」「あだ名に『税金泥

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丹治さん自身も「(いわきから前橋に)引っ越して来るにあたって、いくらもらってきたんだい」、「ずいぶん賠償金もらってきたんだろうねえ」と好奇の目で訪ねられるのは日常茶飯事。車を買い替えれば「裁判やってずいぶん金が出たんかい」と言われた。「自主避難者も区域内避難者もみんな苦しい。お金もらってある意味当たり前です。避難先の人々は『もっともらいなさい』って応援するべきなのに、ほんのわずかなお金をもらったことにやっかみがある」。悔しさが募る。
 大人の偏見は子どもにも広がる。「税金泥棒」と酷いあだ名を付けられた子ども。「近づくな」などと言われているのを黙認する教師。「横浜での“避難者いじめ”が報道された時に皆さんも思ったと思いますけれども、群馬でも『何を今さら』という声もありました」。そこに追い打ちをかけるように今年3月末で住宅の無償提供が打ち切られた。「もう帰って良い地域なんだから帰りなよ」、「いつまで家賃タダで住んでるんだ」という言葉を浴びた。「お前たちは風評被害を広げている張本人だ。もう出て行け」、「福島を想うんだったら帰るのが福島県民の義務だ」などと玄関ドアに貼られた人もいた。
いわき市から群馬県前橋市に“自主避難”した丹治杉江さん。被曝リスクや避難の合理性を認めない国の施策によって避難者がどれだけ偏見や差別を受けているかを語った=二本松市福島県男女共生センター
【「放射能に色があれば…」】
 丹治さんは言う。「もし放射能に色や匂いがあったらこんな苦しみは無いと思うんですけれども、放射能は見えない匂わない。そして、国は20mSvまでは安全などと言って私たちの気持ちを逆なでする。避難した人たちは日々小さくなって、福島から来たという事を隠し続けて暮らしています」。福島から来た、という事を“消す”ために4回も転居を繰り返した人もいる。「ふるさとを返せ、ふるさと喪失がつらいと片方で言いながら、片方では自分が福島県民である事を隠さなければ暮らせない」。哀しいがこれが現実だ。
 前橋地裁の判決は国や東電の過失責任を認めたものの、損害賠償の点では不十分だった。45世帯137人の原告が認められた賠償は、合計でわずか3800万円。少ない原告は7万円しか認められなかった。それでも世間は誤解する。「地域の町内会長が飛んで来て「3800万もらったんだってねえ」って私に言うんです。
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