年間被ばく限度 半年で超えた 労働者告発 福島第1原発廃炉作業の

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しかし、Aさんの6カ月の合計は54・83ミリシーベルトでした。
 なぜ働かせ続けられるのか。
 線量は、年度替わりの3月で一度リセットされ、4月から新たにカウントする“仕掛け”でした。
 Aさんは、あるとき休憩所で、別の会社の作業員同士で、「清水も、あそこでよく働く人をみつけたよね」との会話を聞きました。「おれは、線量の高いところでの短期の使い捨て要員だったのかと怒りがわき起こった」といいます。
 「高い線量を受け、命削っている作業だ。それに見合うお金をもらっていない。重層下請け構造でピンハネされている気がする」
 AさんもBさんの共通する思いです。
 Bさんは、昨年7月から今年2月まで、原子炉建屋などで鉛板の設置作業などに携わりました。
 Bさんは、雇われた会社からの給与明細を見せてくれました。「基本給」が各月でバラバラ、「その他」が一番多い金額でした。雇用保険料、社会保険料も天引きされていません。
 1日あたりにすると、1万3000円から最高で2万円でした。
 AさんもBさんも結局、線量が限度いっぱいになったことと低い日当を考えて、廃炉作業から離れました。
 Aさんは、頭痛がひどく疲れやすいと話します。健康診断も経済的な負担を考えるとままならないといいます。
健康管理も自己責任
 Aさんらの告発から浮かびあがる“闇”のひとつが、被ばくした労働者の実態とその健康管理です。
 「過酷事故から7年目。依然として実質的に50ミリシーベルトを超えた労働者がいることに驚いている。事実上“使い捨て”にしている。しかも、健康管理は自己責任に追い込まれているのは許しがたい」と話すのは、全日本民医連の医師で、九州社会医学研究所所長の田村昭彦さんです。
 田村さんは、政府と東電が「緊急作業」(2011年3月14日から同年12月16日まで)に従事し、50ミリシーベルト以上被ばくした作業者に限った健康管理を批判します。
 いったい、それ以降、高線量の被ばくした作業員は何人いたのか。
 それがわかる唯一の公開資料は、東電が毎月厚労省に報告する「作業者の被ばく線量の評価状況」です。これは、「東電が直接把握したものでなく、各協力会社からの報告を集約したもの」(東電広報)で、Aさんのように労働者の実質的な線量を評価していません。
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